知人の要請
古時計を集めていると色々な人が相談に来るのだが、こちらが困ってしまう相談も多いもの、本人達は真剣であり、何時もそれに答えようとはする。
中には無理難題を持ちかけて来る人も居て迷惑な話だが、むげに断われないから、それ相当の答え方をするのだ、そんな中、買い取って欲しいと言う人も多くいる。
私は骨董商でもなければ、仲介屋でもなく只の蒐集家、友人ならまだしも、少しの伝手をたどってやって来る人も多く、断わりきれない時もある。
やっかいな話であるが、これも仕方がないと思って対応するが、買取だけは勘弁して欲しいものだ、何時も言うセリフ、しかしこれが又大変。
そんな時に断わると怒り出す人も居て、「何でワザワザ持って来たのに」と言うが、それはこちらが頼んだわけでもなく、自分たちの考えた事だ。
腹でその様に思っても声には出せないので、沈黙するしか仕方がないと、そのようにすることにしているが、ストレスが溜まる事にもなる。
普通は見て断わることにしているが、知らない人でもないし、彼の熱意も伝わってくるので、仕方なくジックリと見ることにして、細部の部品の無いものをチェック。
針は無いし、本体に付いている花ボタンは殆どと言って無いもの、振り子室のガラスもないし、枠もまたないものだから、相当の部品が必要になる。
本人は「何とかして欲しいと」の一点張り、何でそんなに再生したいのだと聞き直すと、「我家の爺さんが買った時計で、親父も前から直したいと言っていたものだ」と言うのだ。
古時計について知らない人だからハッキリと説明しなくてはと、「直すと費用がかかっしまい、それほど価値のある時計ではないので」と言うと、「そうか
も知れないが親父の思いがあるから」と是非直して欲しいと言う。
再生するのは難しいことではなく、この種類の時計であれば、部品調達もそんなに難しくは無いもの、しかし高く付く事だけは確か、同じ物を探して程度の良いものを手にした方が良いとは思うが。
この様な時のために部品のストックは常に常備しているが、それは自分の為のもの、イザと言う時のために、平常からコツコツと部品を集めており、その場所も馬鹿にならない位いになるのだ。
仕方なく頼まれたものを再生する事になり、早速部品を探すことにして、在庫の部品を調べるが、中々ピッタリと合う物が少なく、特に振り子室のガラス絵、やっぱり時計一つ一つ違うので、ピッタリと合う部品がないから見つからない事が多いが、今回は偶々ほぼ合う物があり、再生は簡単に完了した。