2017年04月29日

消えた

    盗難か


SANY2082.JPG 私の若い頃の話で怪談めいた怖い話ですが事実の話し、大正、昭和と東京大手時計製造会社の開発に関わられた方の実際の話です。
 私が古時計を蒐集し始めの頃、名古屋市内に古時計を求めて良く行く骨董屋で、品の良い老人とよく鉢合わせをしたものだ。
 その老人に向かって私が古時計を蒐集していると、店の主人が言うと「若いのに古時計が好きですか」とその老人は小さな声で言われた。

 まだ始めたばかりで詳しいことは分かりませんが、今は「数を多くする努力をしています」と答えると、「其れは其れはご苦労なことですね」と頭を下げられた。
 その後、何度かお会いするうちに、自分が時計製造に携わった当時の事を、詳しく語られるようになり、開発製造の面白い裏話を数多く教えてもらっSANY0848.JPGた。

 自分は時計製造会社に入り、製造部門を経て新しい時計の開発に関わるようになり、その後そこの責任者となった人の話。
 当時は数多くの新商品を開発、会社に命運がかかっており、各社生き抜くために心血を注いで新たな時計開発を行っていた時代。
 その老人は新商品の開発に日夜努力をされ、新たな商品を数多く開発され、試作品の山が出来たと言う話をされた。

 その一つが試作品が研究室から夜な夜な消えると言う、夕方までは壁に掛かっていたが、朝には姿がなくお化け話をされた事があった。
 出来の良い試作品は研究室の壁に沢山掛けてあり、誰もが目にすることの出来るようになっていたとの事。SANY3817.JPG
 しかし、毎月給料日の前近くになると何故かしら時計の数が少なくなり、何処に消えたか分からなくなったと。
 其れが日常茶飯事で、誰もとがめなかった様で何時の間にか、その時計が質屋に入っていた事も多くあったらしい。
 又、ある時は販売店の店先に試作品が掛かっていた事もしばしばで、其れを見て冷や汗をかいたこともあったとか。

 老人いわく「当時、給料が安かった職人は給料日前に試作品をこっそりと持ち出しては金に換えていた」と笑顔で昔を語られていた。
 兎に角おおらかな時代のことであったので、数々の開発された時計が消えても、事件には成らなかった様だが今なら大変だ。
 そして、家にまだ試作SANY4646.JPG品の時計があるから「見たければ見せてあげるよ」と、そんな話に飛び付き、私を家に連れて行ってくれた。

 老人の家の壁にはその試作品5、6台の時計が掛かっており、今まで見たことの無い時計ばかり、まだ塗装がされてなく白木のままの物もありビックリ。
 驚きの連続で老人の家を後にしたが、今あの時計はどうなったのか非常に興味がある所だが、何処かのアンティークショップに売りに出ているかも。
 試作品の時計が消える原因究明の回答に成ったが、「カタログに載ってない時計が何故あるのか」の一つのヒントにでもなれば。














posted by kodokei at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 古時計裏話
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