2010年11月23日

続古時計行脚 8

      骨董屋の主人が持ってきた時計は確かに珍しい。

 一目で名古屋製であることは分かるが、製造所の確定となると中々難しいのでは、ラベルは無印であり、渦巻き鈴の台にも名前が無い、箱の後ろには愛知県時計組合のラベルが貼られている。

 時計は6インチ文字盤で、厚さ1センチの一枚板を全体に浅い彫が施されていて、余り見られない形をした古時計であり、時代的には大正時代であると思われるが。

 兎に角、買い出してきたばかりであり、埃が凄いのと機械は錆びて、多分分解掃除をしなくては動かないであろうと思いつつ、時計の横を見れば、ニスが剥げて手で触っただけで、ぼろぼろと剥げてくるから始末が悪い。

 確かに珍品に違いは無いが、此処まで状態がひどいと修復に手間が掛かるのと、修理を請け負ってくれる人が居れば良いのであろうが、時間とお金が掛かるから、結局は高く付いてしまうだろうと私は思って見ていた。

 其の様子を見ていた店の主人「どおですか珍品でしょう」と、一気に攻めてくるが、こちらがその気の無いのを見抜けぬ様子、追い討ちを掛けて「こんな珍品二度と出てこない」と、たたみ掛けて来た。

 「そうだね」と私は言いつつ、「之が完品であればすく゛にでも買って行くけどね」と、之だけ酷いと成ると修復する人がいないのではと、主人に水を向ける。

 主人曰く、「こんな物、古色を付ける塗料があるから、今から塗って上げようか」と、すました顔で私に投げかけてきたから驚き、「そんな事したら時計が台無しに成ってしまう」と言えば、「今まで誰もそんな事は行った人はいないよ」と、又してもすまし顔。

 確かに塗料を塗れば綺麗に成るのは必上、しかしそれでは古時計を蒐集する意味が無い、第一今までの塗料がどんな色で塗られていて、其れが復元可能か調べないうちに、上から塗料を塗ってしまったら価値がなくなってしまう。 

 よく古道具屋やリサイクルショップなどで、ピカピカの塗料が塗られた時計を目にするが、幾ら珍品時計でも買いたいとは思わないし、それでは古時計に対して失礼であると私は思うが。

 そんなやり取りをしていると、店の片隅に八角型の掛時計を発見、主人の話を他所に其の時計にまっしぐら、振り子室の扉を素早く開け中のラベルを読もうとするが、埃まみれで字が読めない。

 ここで友人登場、ラベルを読んでもらう事に、友人時計を持って店の外へと素早く立ち去り、「ローマ字で堀部と読めるけど、後は分からない」と、其れを聞いて俄然やる気がしてきた。

 本当に堀部であれば、今まで探してきたが終ぞお目にかからず、40数年にして始めてお目にかかる代物で、店の外で2人して振り子室のローマ字を確認する。

 背板に張られている白紙には、やはり堀部と確認でき2人して「間違いない」と、確信に変わり、すぐさま主人に「他に珍しいのは」と聞けば、何だか怪訝そうな顔で「こちらの時計は要らないの」と逆に問いかけてきた。





 
posted by kodokei at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 古時計奮闘記
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