
昔、窯と呼ばれる陶器を焼く大きな窯の事であるが、新旧交代して古い窯は新しく作り変えると、其れに伴い窯で使用する道具も新しくするものだから、古い道具が多く出る。
それらの道具を捨てることなく身近な物に再利用してきた瀬戸の窯元、例えば家の塀や石垣の変わりに使用したり、道路に埋めて舗装のような働きをしたりした。
焼き物を燃焼する為に窯で使われてきた道具は、レンガと同じで丈夫なものとなり、石垣の変わりに充分な強度を持っており、それらを再利用することは当たり前に行われてきた。
今残る窯の道具で出来た「石垣や塀」はその数を段々と減らしており、新しく塀や石垣に変えられて姿を消しつつあり、保存が急務となってきている実状だ。
焼き物の町、瀬戸らしい風景が少しずつ消えてゆくのは残念なこと、時代の流であると言えばそれで終わりだが、先人たちの知恵と努力で築かれたものを残してゆくのも我々の勤め。
現在残されている窯道具で作られた美しい塀や石垣、
今再びその存在を見るたびに、瀬戸物の里として千年の歴史がこれ等の石垣や塀に滲み出ているような、そんな気がする美しく積まれた石垣や塀であると思う。
下の写真は瀬戸物に掛ける釉薬をつくるために使用された磁器の入れ物、縦70センチ横40センチ丈夫な入れ物を石垣のかわりとしたもの、今では珍しいものを美しく積まれている。